美味しいものを食べるのが大好きな食いしん坊ゆえ、昔から「食べもの」関連の本や映画は大好き。本なら「シャーロックホームズの料理読本」「チョコレート工場の秘密」、映画なら「バペットの晩餐会」「かもめ食堂」「幸せのレシピ」「コックと泥棒、その妻と愛人」などなど。
昼からの回を見たんだけど、若い男性も含めて50人ぐらい年末の単館映画館に人がいて驚いた〜。エル・ブリはスペインの海辺の田舎にあるレストランだけれど、45席の半年の席に対して予約が220万件・・・「世界一予約の取れないレストラン」。このカリスマシェフ、フェラン・アドリアにフォーカスしたドキュメンタリー。
ここに来る客は「美味しい」ものを食べに来る以上に、「新しい驚き」を求めてやってくる。その料理を開発する期間に半年レストランを休業し、バルセロナに来るんだけれどその手法が凄すぎた。実験室のような厨房にさまざまな旬の食材を運び込み、調理方法をさまざまに変えて、味をチェック。そのデータは写真と感想でデジタルデータ化し、厨房にある壁面にはKJ法のごとく無数のレシピが貼られている。チーフシェフ2人とソムリエ(既に開発段階からいる)がフェランにプレゼン。決定者はフェラン。この緻密さと膨大なデータに裏打ちされた無数のレシピの中から、抽出されるレシピはごく僅か。で。見たことも食べたこともないような料理の数々でした。このあたりの流れは、私が関わっている業種の仕事に本当に良く似ている。地道な膨大な努力の末に、表に出てくるものは新しく、シンプルで最良のもの。まあ、あくまでも理想だけどね。フェランが言っていた「創造は毎日の地道な努力の積み重ね」という言葉が仕事的に響いたな〜。
そしてレストランに戻り5時間40品弱の料理を出すために、客より多いスタッフが雄牛の頭部の置物が置かれている戦場のような厨房で流れるように美しく動く。休業明けのぎこちなさがいつの間にかそれこそ「阿吽」の呼吸でぴったりと美しく。ここもなかなか見ものだった。ドキュメンタリーでナレーションもほとんど入らないんだけどまったく飽きなかったな〜。料理でも何でも「まったく新しいものを作り出す」過程っていうのはこういうものなのね。料理はクリエーションに近い位置だしね。映画で披露されたレシピの数々は「まったく味の想像できないもの」ばかりでしたよ。フェランは日本の料理にかなり感銘を受けたらしく、「Yuzu(柚子)」「Kaki(柿)」や「MATSUTAKE(松茸)」、オブラードなんかも食材として使っていた。オブラート・・・。
ということで、とても満足した仕事納めでした。その後友人に会っておしゃべりもできたし。エル・ブリ関連の本もあるようだから読んでみようっと。