ミラン・クンデラ「無知」読了。って早いよな。でも電車の行き帰りだけでハードカバーでも3日に一冊読めちゃう。活字ジャンキーな私にとっては願ってもないペース。
もともとこの作家は「存在の耐えられない軽さ」の映画が好きになって手を伸ばした作家。あの映画のジュリエット・ビノシェは本当に生き生きと魅力的で今でも強烈に印象に残っている。常にこの作家が逃れられない「プラハの春」を縦糸に、男と女の性愛をベースにしたあれやこれやを横糸にという基本の構図は他のクンデラの著作と同じく底に流れている。少し軽めで読み応えはイマイチながら面白かったのは、これは本当に個人的なことなんだけどこの「男女の云々」という環境から今現時点の私の位置が対極といっていいほど離れているからかな。野生動物で子育てしている時期の雌は雄を近づけないというけどまさにそういう感覚のまっただなかに身を投じているという感じ。だから逆に客観的にこの作家ならではの描写を純粋に楽しめるというか。
でも男女の性愛だって子育てだってある意味「人が生物であり動物である」ことを強烈に認識させる人間の営みという意味では共通するものはあるのかな。以上とりとめのない感想文はおしまい。あ、あと装丁は私が「こんな50代になりたい」と願ってやまない(無理だって)山本容子さん。