パワナ:くじらの失楽園(ル・クレジオ・集英社)読了、といってもかなりの短編なので1日でした。これも本棚にあった蔵書。しかしこの日本語の副題はなんだ?このころ「失楽園」流行ってたんだっけ?ちなみに「パワナ」はインディオの言葉で「鯨」を意味するみたいです。
ものすごく簡単に言えば鯨漁の話。鯨が帰ってきて子どもを産み育てる幻の聖地を発見した捕鯨船の船長とそれに乗り組んだ少年との回想がかなり幻想的に綴られる。いままで楽園だったそのカリフォルニアの入り江は発見されたがために殺戮の場となり、やがて船長とその少年が人生の終わりにその美しさを回想する頃には幻のものとなる。その今は無くなってしまった美しさに己の人生の過ぎ去った思い出の甘美さをなぞらえてつつ余韻を残して物語は終わる。
人生って、その渦中にはまったく普通である出来事も、人生の終わりには甘い感傷を伴って思い起こされるものなんだろうなあ。そう考えると子育てなんて最たるもの、せっせと日記を書いて自分の老後の楽しみにしようっと。