もともと孤独でタフな女性というものに、なにか深層のところで私はあこがれがあるらしい。前作2作ではまだダークな世界の中でも、主人公村野ミロをめぐる人たちとの交流の温度の暖かさを感じられたけど、今回は気持ちいいほど徹底して俗悪にまみれ信じられるものをすべて抹殺されなおタフに生き抜く主人公の姿が描かれている。あまりに壮絶すぎて逆に爽快というか、それでも嫌な後味が残らないところはさすが桐野夏生である。
個人的には前作2作でそこはかとなくファンだった「トモさん」が徹底して貶められていることにはじめちょっと拒否反応があったけどね。あと赤ん坊の出てくるくだりはやはり胸が痛んだ。いくらフィクションだったとしても。しかし桐野夏生の作品の根底に流れている「女性のタフさ」ってのは男の人の目にはどう映っているのかなあ。