今まで何人かの知り合いに指摘されたことなんだけど、私は子どもに話しかけるときに声色や言葉遣いや説明の仕方が、大人に話しかけるのと変わらないそうである。声のトーンと話し言葉が大人に話しかけるそれと一緒なのだ。友達がよく赤ん坊に「〜でちゅね」と自然に話しかけているけど、いざ自分が同じ事をしよとするとひっかかりを感じて照れてしまう、そういうキャラクターである。そういう感覚的に子どもの発達のステージに自分を同化させることが苦手。他にも物事をぐりぐらに伝えるときや何かを説明する時に、あまり端折らず「こんなこと子どもにわかるのか？」みたいな内容を話している自分にふと気がついて可笑しくなることがある。つまり子どもの目線に降りて子どもの言葉に会わせるというよりは、より文節をきっちりさせて言葉を多くして説明する傾向があるのである。

ちょっとこれって愛想なくて母親としての感覚に欠けてる？と思うことがあったけど、ある時言語社会学のバーンスタインの理論である「制限コード」と「精密コード」の理論を目にする機会があり「私のこういうスタイルもまあ別にいいのかな〜」と思う事にした。「制限コード」とは要するに「暗黙の了解」を前提とした会話。例えば家族間での「あれとってよ」「はいはいあれね、今無いわよ」「ふーん」みたいなやりとり、対して「精密コード」とは「あのコップとってよ」「あのコップは今食洗機に入ってるから無いわよ」「はーい」みたいなやりとり。精密コードはより共通の認識がないという前提で誰が会話しても理解できるステージでの言語コードで、社会的なコードとも言えそうだ。

このどちらも使う事が可能である「家族」のユニットの中で「制限コード」を多用する家族よりも「精密コード」をより多用する家族のほうがより子どもの社会的適応がスムーズであるし、学力も高くなるという説である。
まあこの説自体が「階級制度」にからめたかなり古い説であり、当然万能ではなく鵜呑みにするのもちょっと問題があるけれどね。ただまあ子どもに何かを納得させるにあたって、「子どもだから分かんないから後先の経緯を説明せずに命令する」のではなくて「大人に対応するように子どもにも（言葉を易しく使って）説明するという姿勢が自然である」ほうが子どもにはいいみたい。

まあそうはいっても、ほとんどぐりだけど、駄々をこねて泣き叫んだりした場合私はあっという間に「制限コード」に切り替わる。はじめに叱る時はきちんと「どうして怒られるのか」をきちんと説明するんだけどそこからの忍耐が足りない。もう「ワガママ言う子はいらない！出て行きなさーい」の世界である。ここで延々「精密コード」で説明して納得させるってのが出来ない。これができるお母さんたちは偉いよ。本当に。