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  2005-02-13 ‖Sun‖   

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  ネグレクト

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仕事がらみのパーティ会場で展示してあったこのハードカバーを私がぺらぺらめくっていると、「どうぞお持ち帰りください。反響ある本です」と言われありがたく頂戴した本。「ネグレクト 育児放棄?真奈ちゃんはなぜ死んだか

子どもを育てている身として、子どもの虐待という問題にどうしても関心を持ってしまう。特に「ネグレクト」という虐待に陥る親の心理というのがぼんやりとつかみどころがなかった。性的虐待や暴力は明らかに弱者である子どもを虐げる直接行為に私の目には映るのだけど、「育児放棄」というのはそこまでの激しい感情を伴わないようにも見える。だとすればその心理はいったいどういうものなのだろうと。その親の心理を丹念に追ったノンフィクションである。

ダンボールに入れられ餓死した3歳の女の子、どうしてももうすぐ3歳になるぐりと重ねてしまう。死んだ時の発育の様子や体重の数字を追うだけで胸が苦しくなる。マスコミにも「鬼畜」と書かれた両親たち。その両親たちの生い立ちはよく言われる「虐待の連鎖」であることが分かるのだけど、私がぞっとしたのは女の子を死なせた後、拘置所で綴られる双方の非現実的な明るい文面である。「鬼畜」になるにはあまりにも現実を現実と受け止められないイノセントさ。その両親に、本来子どもを亡くした親に訪れる感情を取り戻させようと努力を重ねる弁護団。読んでいて非常に辛かった。

でも、生活や人間関係やあらゆるものに追いつめられた時、私はぜったいにこうはならないという断言はできない。追いつめられ自分の精神を保つために、あらゆる現実からぼんやり離れ無関心になる心理状態の内側に子どももいたとでも言えばいいんだろうか。割り切れない苦しさは残ります。


llcafell at 02.13

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  ネグレクト  

‖excerpt‖ ネグレクト 育児放棄―真奈ちゃんはなぜ死んだか 杉山 春 3歳の女児は段ボール箱でミイラのように餓死していた。 2000年12月10日、愛知県名古屋市近郊のベッドタウンで、3歳になったばかりの女の子が20日近くも段ボールの中に入れられたまま、ほとんど食...
‖ who?  ‖ bookwo^Harm
‖ when? ‖ 02.14*12:04 PM

Comments

育児放棄までいくと強烈すぎて自分達の日常と接点が無いような気もしますが、自分達の負の感情が、自分達の自覚しないうちに育児に、あるいは子供自身に影響を及ぼしていることはあると思います。

家族って結局閉じられた村社会だから、視点を変えればその小さな村のヒエラルキーの一番下に子供がいるってことになるんだろうね。
普段は隠れているけど、理性が何かの拍子に吹き飛んだとき、力関係に従って色んなことが決定されてしまう。そういえば子供の頃の兄弟関係とかって、そんな感じだったかもしれない。それでも越えちゃヤバいなって一線は子供心にあったと思う。

大人になっても「一線」を自覚してないと(あるいは見えなくなると)、それを踏み越えたかどうか自分ではわからないから怖いですよね。


zig at 02.14*01:29 AM

私の場合、zigさんの言うように「負の感情」が子どもに対して出る時は必ずありますね。でも後で「あ、今負の感情がでちゃった」と自覚して子どもに謝ったり、反省したりしているのですが。それが私の一線なんでしょうね。

この本を読んで怖かったのは、ネグレクトって置かれている環境が視覚が狭い状態で負の感情が突然大きくなるのではなくて、少しづつ少しづつ大きくなっていて対象として関わることから目を逸らしていって挙げ句の果てに「殺すつもりじゃなかった」というその経緯です。都合が悪い人間関係は波風たてずリセットしておしまいという、今の時代の人間関係に呼応しているところも大きいのではないかなとも思います。人間の暗い深淵を覗くような気分でした。


llcafell at 02.14*10:12 PM
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