母子家庭、すべて父親の違う異父兄弟4人が母親に置き去りにされるというモチーフは悲惨だし、どうしても母親を責め子どもたちが可哀想という当然の帰結に成りがちなのだけどこの映画は少し違う。誰も涙を見せない。男を作って12歳の長男に「きょうだいを頼むわね」と出て行く母親も少し親の自覚のない子どものような女であって、決して子どもたちに愛情を注いでいない訳ではない。このあたり母親役のYOUはとてもうまかった。そして置き去りにされ、戸籍がないが故に学校にも行けず、長男以外家に閉じこもっている子どもたちはお互いに親密なぬくもりを持ちつつ生活を続ける。秋、冬、春、夏と季節が移りそこにゴンチチの静かなギターの音がかぶるのが、子どもたちの生活の淡々と暖かく細やかな描写にとてもマッチしている。
それでもやがて仕送りの生活費が尽き、手分けして家事をして居心地良く整えられた部屋がどんどん荒んでいき、電気もガスも水道も止められ服も薄汚れていく。その追いつめられた状況で家のことを主婦のように取りしきる長男の明(柳楽優弥)の表情が、飢えた野生動物のようにすさんでいくのは見るのが辛い。そのすさんだ時に事件が起こり、そして彼の他人に差し伸べられた助けを求める手をしっかりと握った少女との心の交流。静かながら印象的なモチーフでした。
しかし柳楽優弥、さすがに何とも言えない大器の雰囲気を感じるな〜。彼はまだまだ子どもなんだけど伏せられた目が本当に奇麗なんですね。美しいです。