これは村野ミロシリーズ3部作の番外編という感じで、彼女の父親の若かりし頃の話である。もともとはハードボイルドから出発した桐野夏生が、そのうち人間の心の深淵を覗くような本の数々に変わるそれ以前。その過渡期にある作品は個人的に「ダーク」ではないかと思うのだけど。
今までの桐野作品のどこにも属さない本当に正統なハードボイルドに仕上がっている。「トップ屋」と呼ばれる週刊誌記者である村野ミロの父親村野(通称村善)が、その卓抜した仕事能力を武器に連続爆弾魔、そして自分が容疑者にされてしまう殺害された女子高生の犯人を追いつめて行くストーリー。いや〜村善に惚れますよ。高度成長期の古い時代の男は現代では何かと避難の的になりますが、その時代の男の魅力的な部分を切り取った感じ。少し「クライマーズ・ハイ」に雰囲気が似ていてそれに男の孤独感、寂寥感をプラスした感じかな。
今自分の本棚をひっくり返してきて村野ミロ作品を読みかえそうかなと思っているところです。