と小難しくいってもイマイチ「納得!」にならないので事例を見てみた。例えばこの「五感(センサリー)ブランド」をうまく構築しているブランドとして成功事例として挙げられているのが「シンガポール航空」。同社のジャンボの機内では、客室乗務員や機内で配られるおしぼりに至るまで同じ「ステファン・フロリディアン・ウォーターズ」という特別にデザインされた香りで統一している。すなわちこのオリエンタルな香りを嗅ぐだけで「シンガポール航空」と分かるという仕組み。なるほどー。次点はアップル。確かにipodやimacの白いあのボディ、独特の手触りはスタイリッシュな広告展開以上に潜在的に訴えるものがありそうだもんなあ。あと、視覚の中でも色彩を強烈に打ち出しているのが「ティファニー」。あの「ティファニーブルー」は色を見るだけで確かに「ティファニー」というブランドを知る人には連想させますよね。
このセンサリーブランディングに必要な考え方として「ブランドを壊す」ことが必要らしい。壊すというと語弊があるけれども、つまりブランドを分解して、その分解したパーツがちゃんとブランドを構築するものとして機能しているか検証するってことみたい。パーツは12種類あって、「形」「色」「言葉」「音」などなど・・・そのパーツひとつひとつになってもそのブランドを想起することができるようになるのが最強のブランディングだと。
ここからは突然個人的な感想になるんだけど、確かに雨上がりのアスファルトの匂いを嗅ぐと子供の頃を連想したり、とある香水を嗅ぐと特定の人を思い出したり。そういう感覚の領域にブランドが刷り込まれるってのは「そんなところまで踏み込まないで欲しい・・・」みたいな拒否反応が起こりそうだけど、知らず知らずのうちに「なんとなくいい感じ」「魅力的な雰囲気」みたいな感覚を刷り込まれてしまうんだろうなあ。
提唱者の人がこの研究を進めたきっかけが、「新宿の街で息をのむほど美しい女性とすれ違ったとき、その女性の香水の香りが彼の幼少時代に一番中の良かった友達の母親がつけていたものと一緒だった。その瞬時に25年前の生まれた街に引き戻され、当時の思い出がありありとよみがえった。」というもの。なかなかロジックではなくセンサリーなきっかけですね。多分こういう五感が引き出す人間の感情経験は、誰にとっても非常にプライベートなそして大切な一瞬なのかも知れないですね。