とても20数年前に出た本とは思えないです。初めて父親になり娘の成長に一喜一憂する父親。今まで朝まで飲んで市井を観察するほど楽しいことはないと思っていたのに、家に帰って娘が笑顔で金切り声を上げて喜ぶ姿に「飛行機のタラップから降りてきたビートルズになった気分」と思う。初めて子供が産まれ、一男性が父親になっていく心の動きはきっと今でもまったく同じなんだろうなあ。働いていた妻が、子供にかかりきりになりその喜びの反面、世の中から取り残されていく焦燥感も今とまったく変わらない。
学生の時に読んだときは、あくまでも「アメリカン・ビート」に魅せられたコラムニストの語り口の延長を期待して読んだのだけど、子供を持つ今読むと、自分の子供のその頃その時の感動であるとか思考が思い出されてきて、思わず電車の中であまりの懐かしさ愛おしさに涙ぐんじゃうことが多々あった。これを読んだ後に子どもたちのお迎えに行くのが、いつも楽しみなのだけど余計早く会いたくなるような。家に帰ってからも、子供たちの言動に大笑いする瞬間瞬間に、「ああ、こんなこともきっと数年経てば懐かしくて懐かしくてたまらなくなるんだろうなあ」と感慨にふけったりね。
子供がまったく同じ時期に読めばまたこれからどうなるかが、非常に育児書と違った切り口でリアルに想像できて楽しいだろうけど、過ぎ去った今読むのも、例えは変だけどまるで育児の楽しさという「するめ」を噛んで味わっているような感じです。非常にお勧め!だけど絶版なんだよなあ・・・・。