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  2006-12-18 ‖Mon‖   

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  絆

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実家で私の母が溺愛していた猫が家からふらりと出て行って、そのまま帰ってこなくなったのは1ヶ月前ぐらい。私の母の可愛がりようは近所でも評判で、実家に帰るたびに母とその話をして笑いあっていたのだけど・・・結局近くの田んぼの用水路で死体で見つかった。

それまで母はもう言葉通り「あちこち想定できるところはすべて」探しまわり近所の人にも情報提供を呼びかけて、ここまで探していないのなら多分ふらっと気ままに出て行ったんだろう、と半ば生きていることを肯定しつつ、でも死んでいるのならせめて家に戻らせてやりたいとも思いつつ、あきらめの気持ちになっていた。しかし不思議なことに、その猫が母の夢に出てきたらしい。それも二晩連続で。

一日目は元気でツヤツヤした毛並みでいつも通りの定位置(冷蔵庫の上)に乗っていて、「あ、うしくん(猫なのにこんな名前なのです。模様が白黒だから)帰ってきたの?」と母が喜んでいる夢、そして次の日は死んでお腹がふくれていて、それを鳥がつつきにきて母が追い払おうとすると5、6羽の鳥がヒッチコックの鳥さながら襲ってくる夢。母は父に夢を話して、それまで思いつきもしなかった田んぼの用水路を見てきてほしいと正確な場所を指示した。彼女がそれまで頭の中で思い描きもしなかった場所で、自分でも口から出てきた時はびっくりしたらしい。そしてそこで見つかった。不思議だけどきっと、猫が嘆く母親を心配して知らせにきたんだろう。それしか説明の仕様がない。

そんな昔話に出てきそうな話を信じてしまうぐらい、母とこの猫との交流は密度が濃かった。猫の性格も敏感なタイプで母親以外の誰にもリラックスしてなつかない性格でそれで余計可愛かったというのもあるかもしれない。気が強く愛憎の情深い九州女の母と、あかんたれの猫。身を寄せ合うというのはちょっとお涙頂戴になるけど、精神的にはそれに近かっただろう。

猫は幸せだったと思う。母から有り余る愛情を受けながら、家に閉じ込められることもなく好きなときに外に出て、ネズミを狩り散歩してお腹がすけば暖かい家に戻ってくる。こんな生活を7年近く続けていた。私から見ても自分の野生を制限されることもなく生きていることを謳歌しているような猫だった。

ただ、母が心配。電話の向こうで泣きながら「死んでいるのを見た時にね、ああ、生き物の命は儚いんだなあって。だからあとで「○○してあげればよかった」と思わないように今を大切にしなきゃって、あんたもそうしなさいよ」と言う母につられて私も泣いていた。死んだ猫をバスタオルにくるみ箱に入れて、家の中を話しかけながら見せてあげたという話を聞き、母の心中を想像してまた泣いた。日頃は大したこともせず、時には母を否定的に見る娘ながら、私を生んでくれ育ててくれた母と精神が繋がっているなあと思う瞬間。「十分うしくんは幸せだったと思うよ。お母さんはそうして上げたと思うから」という私の言葉に、「49日過ぎたら、もうあまり悲しまずにいようと思って」というきっと母の性格からしたらまだまだ悲しみは続くだろうと思うのに、その気丈さを見る。そしてその気丈さにきっとそれを受け継いだに違いない自分の姿を見る。こういう時に母から自分が生まれ、その血が私に流れていてそしてきっと私の子どもたちにも引き継がれて流れていることを、揺るぎない生命の流れのイメージとして実感する。

しばらくは母と密に連絡を取り合おうと思っている。


llcafell at 12.18

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Comments

何と不思議な話・・
先日毛皮の動画見てショック受けてたので、こんなに可愛がられてるネコちゃんも居るんだと思うと少しホッ・・。

そういう我が実家の犬・ナナは今日「子宮蓄膿症」(ナンですかそれは?)の手術なんです。心配。


ぷく at 12.19*01:50 PM

不思議なんだけど、なんとなく腑におちちゃうような母と猫の絆でした。
母は本当に愛情を文字通り注ぐ人で、だから悲しみも余計なんですよね・・・
私と妹はあまり似てないのですがって愛情薄い人ではないんですがね(笑)

ナナちゃんは無事手術終わった?しかし「子宮蓄膿症」ってすごい病名ですね。
人間にはない犬特有の病気なのかな?


llcafell at 12.19*10:11 PM
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