ずっと、手をつけずに積んであった「わたしを離さないで」、さわりを読もうとしてなかなか乗れなかったのだけど、おとといから本腰を入れて読み出すともう止まらなくなり今日の朝読了。久しぶりに本で電車の中で泣いた。相変わらずの静謐な、淡々とした文体なのだけど非常に土屋政雄の日本語訳も本の世界観にマッチしていて違和感なし。素晴らしい文体。
とてもとても心を揺さぶられたんだけど、それが自分の考えになって言葉で表現できるにはまだ時間を要すると思う。なのでエントリーで上げておいてあとで追記することになると思います。
「人の一生は私たちが思っているよりずっと短く、限られた短い時間の中で愛や友情について学ばなければならない。いつ終わるかも知れない時間の中でいかに経験するか。このテーマは、私の小説の根幹に一貫して流れています」
話の始まりは謎のまま始まる。「介護人」と呼ばれるキャシーが、「提供者」のケアをしながら自分の生い立ちを回想する始まりはとてもとても静謐。全寮制の学校「へールシャム」で小さい頃からいろいろな、生き生きとした人間関係や教養の刺激を受けながら育っていくキャシー、そしてその友達であるトミー、ルースと青春時代の鮮やかな心理のやりとりが精緻にセンシティブに描き積み上げられていく。でもその生活の中で読む人にも不安を抱かせる「何か歪んでいる」感覚。それが読みすすめるにつれて明らかになっていく。SF的なプロットなのだけどこれはそのプロットで読ませる本ではなく、そのプロットの上に展開される人間の心理的なやり取りの魅力に、読むことを途中で止めることができない、そんな本だった。
なぜ運命を受け入れるのか。そこの憤りよりもその運命を受け入れて彼、彼女たちの人生をなお真摯に生きようとするその姿に涙した。伏線として張られている、キャシーが幸せな小学生の頃、題名にもなった「Never let me go」の歌をカセットで聞きながら一人踊る姿、それを物陰から見て泣いていた「マダム」の存在、そしてどうして彼女が泣いていたかが実際明かされる前に読者として予感したときから、私は読みながらずっと泣いていたと思う。さすがに電車の中なので涙ボロボロとは流せなかったけれど。
単なるお涙頂戴という話ではない。読後感も非常に複雑なのだけれどそれでもこの本は私を心から揺さぶり、そして感動させた今年のベスト1の本になると思う。話自体はいろいろな示唆を含みながらそれでも「真摯に与えられた命を生きる」ことの美しさを感じさせてくれた。これはプロットを離れて私たちの日々にも通じることなのかもしれない。
私もこの本は読んでみたいとずっと思っていて・・・。
でも、なんだか時間的にも精神的にもこういう作品に浸る余裕が無くて・・・。
もし、読めることがあったら、こういうジャンルでかふぇさんとは語り合ってみたいです♪
うーん、確かに精神的に余裕ないと、ずしっと対峙する本とはなかなか向き合えないよね。
好きなくせに海外の純文学って私もそういうのに入るよ。
多分世界観に入り込むのにかなりの精神力、使うんだろうね〜。
でも、この話はほんと、奥が深いというか・・・まだうまくまとまらないので
新年会でワイン飲みながら話すね〜。