第60回カンヌ国際映画祭が27日夜(日本時間28日未明)に閉幕を迎え、コンペティション部門に日本から唯一参加した河瀬直美監督(37)の「殯(もがり)の森」が、最高賞パルムドールに次ぐグランプリを受賞した。
「殯の森」は、子を亡くしたばかりの介護施設の女性職員と、妻と死別した認知症の老人が墓参と死別した認知症の老人が墓参途中で深い森に迷い込む物語。監督の故郷で、活動拠点を置く奈良市の郊外の山里を舞台にした。
河瀬監督は97年のカンヌで、初の劇映画「萌(もえ)の朱雀(すざく)」がカメラドール(新人監督賞)を受賞。それから10年で結婚、離婚、介護、再婚、子育てを経験した。グランプリ受賞のスピーチは「映画を作るって本当に大変なこと。それは人生に似ています」と切り出した。
「人生はたくさんの困難がある。お金とか服とか車とか、形あるものによりどころを求めようとするが、満たされるのは一部。目に見えないもの――誰かの思い、光、風、亡くなった人の面影。私たちは、そういうものに心の支えを見つけた時、たった一人でも立っていられる、そんな生き物なのだと思います」
その言葉に観衆は大きな拍手を送り、監督は「そういった映画を評価してくれてありがとう。この世界はすばらしいです」と応じた。
素晴らしいコメントでした。朝にテレビで彼女のこのコメントを聞いて私的にはとても感銘を受けました。
映画はまだ見ていないのですが、彼女が「萌の朱雀」という映画で賞をもらった時から気にはなっていた。同年代であること。母親であること、そして彼女がずっとフィールドの拠点を置いている奈良の地域が私が学生時代を過ごしたまさにそこであることなど・・・。いろいろと共感を呼ぶかけらはたくさんあったわけですが。
今回の「殯の森」の舞台も「春日奥山原生林」らしい。多感な時期に、春日大社の神の森ゆえ手付かずで残された森を、そぞろ歩いた記憶が体感として蘇る。大杉の大木が数々残るそのひんやりとした温度感や日が僅かに差し込むほの明るさ、そして森の湿った匂い。
そういうささやかな記憶が自分を支えるという彼女のことばをここに記録しておきます。そういえば「本当に大切なものは目に見えないんだよ」と言ったのは星の王子さまだったっけ?