林真理子の方は雑誌「Precious」に連載されていたのを虫食いのように読んでいて、通して読みたかったのもあった。40を過ぎて夫と娘のある働く女性が、自分の母親が介護しなければならない状況になり・・・というモチーフ。相変わらず作者の林真理子の好む「セレブリティ」的なシチュエーションやファッションは設定と小道具としてあちらこちらに顔を出す。まあファッション雑誌に連載するのでは致し方ないか・・・。しかし「Anego」も確か「Domani」で連載してたんだよなあ。結局雑誌での連載物って、雑誌読者の願望の投影を外れることは許されないんだろう。でもやはりこの人は文章がうまいし、主人公を実は客観的にかなり冷静に描いている気もする。
川上弘美はいつもの私の好きなたゆたうような文章は健在。モチーフはかなり生々しいアラフォー女性2人をめぐる恋愛を登場人物の目を違えることによって淡々と描いていくもの。ストーリーの骨子だけ見れば複数の男女が絡むドロドロ恋愛ドラマだけれど、川上弘美の手によってもっと内面的・内省的に深いところを読み手が想像できるような流れになっていてなかなか良かった。
この2冊を一緒に読めたことは面白かったな。「秋の森の奇跡」がアラフォーになり、それでもまだ女としてこんな素敵な恋愛ができるみたいな「まだまだ右肩上がり」を強調する反面、「夜の公園」はアラフォーになってまだ自分の心を自分でははっきりと分からず、でも今までのことをそぎ落として次の一歩をまだ自分自身が分からないまま踏む感じ。やはり作家なりの独自の世界がはっきりあるんだなあ。
ということで次は私のもとの読書路線に戻った「黄昏たゆたい美術館」に入ります。こういう絵画美術系モチーフの推理小説、久しぶりだなあ〜楽しみです。