でも展覧会としても予想以上に良かった。特にミクストメディアやビデオ・インスタレーションの部門。特に良かったのはヤン・ジェンジョンの「アイ・ウィル・ダイ」という作品。天井まで5mぐらいある部屋に入ると、白い壁いっぱいに10カ国で撮影されてきた10の画面が両横に展開され、すべて一般の人がそれぞれの国の言葉で「アイ・ウィル・ダイ」と言う場面が次々に映し出されるもの。日本の若者がカメラにはにかんで笑いながら言ったり、アメリカの若者がノリよく叫んでいたり、フランスのインテリ婦人がさらりと言ってのけたり、ドイツの老人がリアルな発言としてつぶやいたり・・・というのが延々繰り返される。その真ん中にベンチがあり、しばらくぼっと見ていた。そう、例外なく「私は死ぬ」のだけどその実感がない台詞が余計その事実を感じさせるというか。
あと、樹脂で作られたリアルないろんな国の車椅子の瀕死の老人が、静かな平面で勝手に動き回る作品「老人ホーム」、と壁に穴が開いていて除くと人の目が見え、その部屋を出て裏に回るとビン・ラディンと思しき人間がその壁の穴を覗いている「I am here」も非日常的な不安感を起こさせる作品でなかなかのものだった。
感性的にはとにかく収穫。人が少ない展覧会って私にとっては「悦楽」です。おまけでアマゾンで予約していたのに「手に入らない」ということで強制解除された松井冬子特集の「美術手帳」1月号をミュージアムショップにて発見。ラスト1冊、ラッキー!
本当なら、美術館に行く前に飲んで感性を柔らかくして行ったほうが良かったかな。とにかくでも、美術館入館料1000円+ワイン&タパスセット1000円の計2000円2時間のリフレッシュは、私個人的にはベストなルートです。
記録のために書くとタパスは「春の豆たくさんのマスタード和え」。大きな机の上には菜の花が投げ入れてありました。