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  2013-08-16 ‖Fri‖   

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  風立ちぬ:考察と感想

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子どもたちも楽しみにしていたジプリ最新作「風立ちぬ」家族で観てきました。子どもたちには題材も話の流れ的にも難しかったみたい。娘は「何言ってるのか分からないところがあった」息子は「ジプリ映画の中で一番難しかったな〜。夢のところと現実があいまいな感じ」という感想。

でも、大人にとっては示唆に富んでいろいろと考えさせられる良い映画だったと思う。感想で「良かった面白かった」とすぐに言葉にはできないけれど、胸の中に消化してないところも残り続けて自問自答する姿勢がずっと続く、余韻のあるストーリー。解釈次第でどんな方向へも想像することができる。だからまだまだこれから思い至るところがあるかもしれないれど、現時点の感想としての私的メモ。

これは「モノづくり」の楽しさやそれに取り憑かれた人たちには響く映画だと思う。鯖の骨の美しい曲線に翼の設計のヒントを得る。夜を徹して「美しい」飛行機を作るために情熱を持って仕事にまい進する。目的が「美しい飛行機を作る」であって、それが殺戮の道具に使われたり特攻として一機も戻ってこない悲壮な運命を辿るとしてもそれでもそれを作りたいという気持ちに憑かれてやまない。その高揚感、そして抱き合わせの人生の哀しみが主人公から良く伝わったと思う。

美しい飛行機を作る夢の象徴としてイタリアの飛行機設計家が出てくるけれど、どうしても「紅の豚」の飛行機に対する男子的浪漫が根底にあるよなあ。そして主人公の二郎の理系男子っぷり!声をいかにも棒読みで感情があまり出ない庵野さんがやったというのも、それはそれでぴったりな気もする。感情の機微に疎くて用事さえすめばすっと立ち去るその佇まいがもう理系そのものという感じ。眼鏡スーツ男子。言うまでもなく好み。

そんな理系男子が女性、菜穂子を好きになるとああなるんだなあ。仕事は仕事で夢を持ってまい進しながら菜穂子には最善を尽くす。仕事を投げ出すという選択肢は彼の中ではないんだろうなあと。でも菜穂子に対して、日頃衝動的に動かないタイプの気持ちの表現がそれだからこそ良かった。一番胸を突かれたのは菜穂子が喀血した知らせを聞いて、汽車の外で飛行機の設計を続けながらそこに涙がぼたぼた落ちていく描写。思い出すだけで泣けてきます。。。

歴史的背景や堀辰雄の「風立ちぬ」の結核のその当時の恐ろしさを知りつつその上で生きるひとりの男の人生。その人生は決して喜びだけではなかったのだろうなあと想像させられるエンディング。でもその中で煌く瞬間を胸に人は生きていくのだろうなあ。

と散文的ですがこんなところで。また追記するかも。映画の中に頻繁に出てくる煙草を吸う行為、今の世には逆行しているけど集中したり、心を落ち着けたりするいい道具だったのだなあと世の議論を横目に思ったりしています。


llcafell at 08.16

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